本城直季 写真集「TREASURE BOX」 サイン入り
宝塚歌劇団95周年を迎えた'09年に上演され公演を収録。
「トレジャーボックス」撮影ノート
宝塚はいつも「決定的瞬間」で満ちあふれている。
文・本城直季
宝塚の舞台は大がかりなセットが巧みに仕掛けられ、次から次へと絶え間なく変わる。そして、色艶やかな衣装は豪華絢爛な舞台をよりいっそう引き立てている特に、舞台後半の演目「レビュー」と呼ばれるダンスシーンは圧巻で、輝かしい電飾に、カラフルな照明が色を添えて、これ以上ないというくらいの華やかさで光り輝く。観客席から見る舞台はまるでドールハウスを覗き込んだような世界で踊っている姿はきらきらと光る宝石箱の中のオルゴール人形を見ているようである。
僕の撮影スタイルはもちろん宝塚のスターにも焦点を当てているが、舞台全体も撮影している。僕が感じた宝塚の面白さは「演出」「照明」「舞台」「演技」
「衣装」それらすべての装飾的な華やかさだ。観客席から4×5インチの大判サイズの板状のフィルムで1枚1枚撮影することによって、これまでのトップスターを中心とするポートレイト主体の宝塚とは異なった、もうひとつの宝塚を表現することになった。
暗幕のなかでピントグラスを覗き、ピントの合う範囲を定め、シャッタースピードを決め、露出を計り、ピントグラスの蓋を閉じてフィルムを差し込み、シャッターを切る。大判サイズのカメラではシャッターを切る瞬間、カメラに写り込んでいる映像を見ながら撮影することができないため、カメラの脇から目視してシャッターを切る。
そもそも僕が使用しているカメラは「決定的瞬間」を狙うようには設計されていない。幕が開いたら最後まで片時も止まることなくエンディングに向かって進行する舞台を撮することは、僕が使っているカメラの特性上とても難しい作業だ。しかし完璧に作られた宝塚の舞台は、「決定的瞬間」という言葉とは関係なく、いつシャッターを切ったとしても「決定的瞬間」を捉えている。
出版社: 講談社
発売日: 2010/6/9
単行本: 176ページ